一台、一台に安全への思いを込めて、お客様のご要望を形にし続ける。
ニシハツは、今も本社を置く佐賀県唐津市の小さな町工場からスタートした。創業当時、製造していたのは、地元の漁師さんが使う集魚灯や、漁船の電気設備。「こんな装置を作って欲しい」という要望があったら、面倒なものでもきっちり作る。そんな会社の文化は、今もしっかりと息づいている。
「今でこそ、非常用発電装置のメーカーとしては、トップクラスの会社になりましたが、競合と比べれば規模も小さいですし、知名度だってない。それでも選んでもらえるのは『ニシハツに頼めば、何とかしてくれる』という期待を、お客様が持っていてくれるからなのでしょう」そう話してくれたのは、設計部門のベテラン社員だ。
ニシハツが製造する非常用発電装置の約90%は、何らかのカスタマイズが加えられて出荷される。ビジネスとしての効率は決して良くない。「これ、カスタマイズじゃなくて、新規開発じゃないの?」というぐらい、手のかかることも少なくない。しかし、お客様の信頼に応えるというのは、おそらくは、そうしたことの積み重ねなのだ。
「ほかの会社が面倒がって手を出さないようなカスタマイズも、どんどんやってしまいますから、自然と社内には設計のノウハウがたまっていく。それがニシハツの設計部門の強みになっているのは間違いないと思います」
若手の設計技術者は、自分たちの仕事を、そんなふうに考えている。
非常用だからこそ、設計や製造に手は抜けない。その責任の重大さを、社員の誰もが深く心に刻んでいる。
「非常用発電装置は、15~20年が製品としての寿命。その間、週に一回、5分程度の保安運転を行うことになっていますが、火災にも災害にも出会わずに、引退していく製品もたくさんあります。しかし、いざという時には確実に動いて、お客様のご期待に応えなくてはなりません。ですから、私たちが設計した製品を、製造部門が丁寧に組立て、品質管理部門がしつこいぐらいに試運転して、ようやくお客様のお手元に届くのです」
ニシハツに入社して16年になる設計技術者が製品への思いを語ってくれた。電気回路の担当として、彼がこれまでにカスタマイズしてきた非常用発電機は2000台を超える。
筐体の板金や塗装から、電気回路の設計や実装まで、自社内でやっている非常用発電装置メーカーは、おそらくニシハツだけ。だからこそ、どんなカスタマイズを依頼されても対応できるし、何か課題があれば各部門の技術者が徹底的に話し合う。営業も含めて、部署間の壁がないから「お客様の要望する仕様の通りにカスタマイズしたら、訳の分からないものができてしまった」ということが起こらない。
「こんな仕事をしていると、火災や震災のニュースには敏感になります。自分が設計した発電機が、きっと被災地で困っている人の支えになっていると確信しています。」
あなたの仕事のやりがいは? という質問に、若手技術者は、こんな答えを返してくれた。
一台、一台に、そんな思いを込めながら、ニシハツは、非常用発電装置を作り続けている。