コンサルティングからカスタマイズまで、お客様のご要望にはすべて、応えたい。
「私が入社したころ、ニシハツは従業員数が数十名という小さな会社で、中近東に出荷される移動用発電機を製造していました。発注が多くなって、製造が間に合わなくなると、私たち営業も外回りから戻ると工場に入り、作業を手伝ったりしていました。そんな伝統があるからなのか、ニシハツの営業と技術は、昔からとても距離が近い。『お前に頼まれたら仕方がない。忙しいけど、何とかするよ』」などと、技術部門の先輩に助けてもらったこともよくありました」
そう話してくれたのは、勤続30年のベテラン営業だ。
会社が大きく変わったのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。非常用発電装置の設置を義務付ける法律ができたのに加え、災害時に電気が使えなくなることの大変さを、多くの人が知ったのだ。特需ともいえる大量の発注が寄せられた。
しかし、非常用発電装置についての専門知識を持つ人は、お客様の中にもほとんどいない。ニシハツに寄せられる相談は「上司から非常用発電装置の設置を命じられたけど、どうすればいいでしょうか」とか「法律で設置しなければならないらしいのだけど、どのぐらいの値段のものなの」といったことが非常に多い。
自分たちの仕事の進め方について、中堅営業が教えてくれた。
「ニシハツの営業は、カタログに掲載された標準品を売って終わり、ということはまずありません。そもそも非常用発電装置とは、という話に始まり、お客様が設置しようとしている場所を確認したり、カスタマイズをご提案したり。コンサルティング的なことから入らせていただくことがほとんどです」
非常用発電装置の業界には、超大手といえるメーカーも存在する。そんな中、ニシハツは市場シェアで二位から三位あたりに位置付けている。唐津に本社を置く小さな会社が、全国規模の事業を展開できていること自体、ほかではちょっと考えにくい。そんなことができているのは、ニシハツの営業たちに「お客様のために、杓子定規にならないサービスを提供しよう」という気持ちがあるからかもしれない。
「お客様から『ちょっと点検に来てほしい』と言われれば、近くに出かけた時に、ついでに訪問する事もあります。カスタマイズの仕様変更が何度もあると、設計担当者は大変なのですが『悪いけど、やってあげて』とお願いしたりもする。商売としては良くないのでしょうが、せっかくニシハツを選んでくださったのだから、お客様には喜んでもらいたい。そんな気持ちを技術者も汲んでくれるから、良いモノが、適切な値段で出来上がるのだと思います」
そう話すのは、若手の営業だ。
非常用発電装置は、万が一の時には人の命にも関わるものだからこそ、決して安売りはしたくない。「誠意などと、自分で言うとおこがましいですが」とニシハツの社員たちは照れるけれど、そうやって真面目に仕事に取り組んでいることを、お客様が評価してくれているのだ。
「私もそろそろ、引退の歳です。いつか『非常用発電装置はMade in 唐津が最高だ』なんて話になって、業界シェアもトップを取ったりしてくれないかと、若い世代には期待しているのですけれどね」
会社の未来について、ベテラン営業はそんなふうに話してくれた。